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STORY
魂を己が力と燃やす神秘の術理が罷り通る新世界、オフィー・レイニア。
世界を二分する大陸の内が一つ、東大陸に根付く「帝国」は桜芽吹く春の季節を謳歌していた。
帝国軍に所属する若き士官「カミナギ・ヤマト」は、生来自我というものが薄く、加えて今生きるこの瞬間に対し、どこか夢のような――あまりにも非現実めいたモノであるという感慨を常日頃から抱いていた。
優れた能力を持っているはずなのに、肝心なところで人よりも劣る自らの才能ですら、そういった日常の違和感に拍車をかけて、ボタンを掛け違えているかのような心地で日々を生きる。これからもそうだったし、
きっとこれからもそうなのだろうと、彼は無機質に考えていた。
ままならない世界。噛み合わぬ自分。別にどうでもよいことだ。そんなもの、些事ですらありはしない。
自分は今、生きている。傍らには仲間や友が居て、恵まれた明日を迎えられる。それ以上に、果たして何を望べくだというのだろうか?
よって世界は事もなし。昨日も今日も明日も果て無く――彼は、ここで生きていく。
本当に、それでよかった。切に切に、この夢現が続けばいいと、切に切に、彼は思っていた。
――故に、さあ。捻りなく順当に、価値無き断章が紡がれる。
他でもないお前自身が、それを理解していたはずだ。そうだろう、カミナギ・ヤマト。
「現実は、地獄だから」
ならば吼えろよ至高の白閃。翳りを知らぬ英雄譚が、猛り轟く双雷が、今もお前を待っている。
目覚めようか、夢は終わりだ。
そして全ては予定調和の如くに帰結する。元よりこれは、彼が「えいゆう」になるための物語――。
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